自ら死を選ぶこと

（今回、ちょっと嫌な描写があるかもしれません）

自ら死を選ぶというのは、相当のことで。
想像力を働かせて、死のうとしてみてほしい。
今から気を失うように楽に死ねる薬を飲むでも、痛みを伴わない落下死でも、やろうとすることを想像してみてほしい。
それがうまく想像できた人にしかわからないけど、めちゃくちゃに怖いものだ。
死後の世界がどうとか、死んだらどうなるかとか、そういう観念的な「死」の怖さじゃなくて。
肉体的にびびってしまうのが本当。
正常ならば。

小学生の時に二度、自殺未遂をした。
家庭はむちゃくちゃだし、学校ではいじめがあるしで、小学生の頭と行動力では逃げ場を見出すことは困難だった。
死ぬ以外に逃げる選択肢がなかった。
詳細は省くけど、結果二度とも生きてた。
その行為は、誰も知らない。
誰にも知られないまま死を選んで、でも、生きてた。
簡単に言うなら、幼かったので方法が甘かった。完全に死に至る行為を取れなかった。
それも含めて、死ぬ運命になかったのだと思う。

二度、自殺現場に遭遇したことがある。
一度目は飛び降り。
ドンっ！と雷でも落ちたのかなという音がして外に出たら、人が異様な形になって倒れていた。
二度目は電車の飛び込み。
かつて肉体だった断片が、線路に散らばっていた。

残された人は、なぜ相談してくれなかったのだとか。
生きてればいいこともあるだとか。
全力で支えたのに、とか言う。

何かできたんじゃないかとか。
自分のせいだろうかとか。
何か自分が言ったかやってしまったのだろうかとか、思う。

きっとわたしだって言うし思う。
身近な人ならもちろん、遠く離れた画面越しに気にかけていた人だって、死なれたらつらい。ましてや自死されると本当にしんどい。

それでも、自分で死を選ぶなんてもう、正常な判断じゃできないことだから。
誰かに相談しようとか。
他の選択肢はないだろうかとか。
そういう思考がもうできなくなっている。

ある意味、病死とも言える。
生物が自分から死を選ぶなんて、普通できない。
それを選べる時点でもう、死んでいるのかもしれない。
自分の肉体を終わらせるという、通常であれば耐え難いで恐怖が、もはやそこには存在しなくなる。
自然にそちらに足が向いてしまう。
自死は自然死なんだと、言ってしまいそうになる。

どう考えても良くはない。
負のエネルギーを抱えたまま命を絶ってしまうと、そのエネルギーは長い間同じ場所に固定化される。そこだけ、どろっとして動かないなにかがこびりつく。
身体のシステムが、血流や体液がきれいに流れてることで健康なように。
きれいにろ過された清流がある場所が、さわやかで美しい環境を維持しているように。
滞りというものは、エネルギーを歪ませて流れを阻害する。
この世の健康を害してしまう。

けど。
良くはないけど。
あまりにも自然にそれを選んでしまうのだと。
残された人のことを考えたりもしたけど、それでも無理なんだと。
ともかく解放させてほしいのだと。

その行為を肯定するわけでも、ましてや擁護なんかじゃないけれど。
その人にとっては、それくらいの状況だったんだと。
一人でも想像することができれば、少しは救われるかなと思う。

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