HSP/HSSについての考察 25 - 過酷な状況で発揮されるタフさ

久々にHSP/HSSシリーズ。

『夜と霧』という世界的ベストセラーの本があります。
オーストリアの精神科医・心理学者ヴィクトール・フランクルがユダヤ人強制収容所経験に基づいて書いたもの。
多くの心理学者がそうであるように、おそらくヴィクトール氏もHSP。本の記述を辿ると、そうであることが容易に伝わってきます。
この中で、HSPは過酷な状況下を耐え抜き、さらには人を助けることも出来たことが記されています。
HSPは繊細がゆえに内向的です。
その内向性は、現実が厳しいときに身を守る術になるのだと、この本は語ります。
なぜなら逃げ場のない状況下、精神的に追い詰められていく人たちの中で、HSPは自分の内面へと逃げ込むことができます。内的豊かさの中に心を置き、一定レベルのリラックスと平静さを取り戻すことができるのです。
それは肉体的にはるかに頑丈さを持つ人よりも顕著だったと。
そうして自分の内面に逃げ場を作り出すことで精神的にタフだと言えたHSPである著者は、強制収容所にいる人たちに心の置き方を伝えていきます。ある時は親身になって話に耳を傾け、持ち前の共感性と察しの良さで、相手の弱いところをサポートすることもあったでしょう。

HSPはよく、臆病で小心者で、敏感すぎてコミュニケーション能力にも乏しいという誤解を受けます。社会的弱者だと。
けれども『夜と霧』に代表されるように、多くの実例がそうではないと証明しています。
ある意味、平常時よりも過酷な状況に強いとも言えるのかもしれません。

共感性が高く、全体的とも言われる日本人にはHSPが多いと言われています。
そして日本人はとても耐性が強いのだそう。
一説には、白人は徹夜というものができないと言われています。数日徹夜すると死んでしまうくらいに弱るのだとか。労働もそうで、そんなに長い時間を働くことに使うことができないのだと。
けれど日本人には耐え性があります。いや、あってしまう。徹夜できてしまう、長時間労働できてしまう。
ブラックな労働を思い浮かべると、長所として上げることがはばかられるけど。
震災の時も、いろんな被災地でも、不平不満から暴徒化したりその場を混乱させるようなことはせず、整然と列に並ぶことができる忍耐力があるんですね。
そのことと、日本人にHSP的気質が多いことは関連性のある話なのではと思っています。

コロナ禍の時でも、内的豊かさに助けられたHSPは多かったように思います。
強かったのは、その中でもオタク気質の人たち。
時間ができた人は大好きな趣味に没頭し、その環境を整えたり、新たな趣味に発展させているのを見ました。
嬉々として、世界が止まっている時間を過ごせていたように思います。

自分が自分に何をすると喜ばせることができるか。
そのことを知っている人は強い。
どんなにしんどい場所に放り込まれても、自分で自分に栄養を与え続けることができるから。

そしてそれを知るには、やっぱり内省するしかない。

外交的に社交的に生きてきた人も、ある程度の年齢を重ねると内省が重要になってきます。人間関係が増え、責任が増え、やるべきことも、背負うものも年齢とともに大きくなってくるから。
自分で自分を元気にする方法を持たないと、人生が立ち行かなくなってくるからです。
男性に多い、いわゆる中年期鬱というのもこれに当たります。うちの叔父はこれで自らの命を絶ってしまいました。

でもそれってどうやればいいの？
という時に役に立つのが、それを得意としてきたHSPの経験値です。
HSPは、とても静かに自分の場所でそれを発信しています。なんとなく相談をしたくなる人、いつも話をよく聞いてくれる人、何故か自分のことをわかってくれるような気がする人、どんな突飛な話でも黙って受け入れてくれそうな人。
身近にそんな人がいたら、おそらくHSPである可能性が高い。
HSPは僧侶や神秘家として、けれど普通の人として、社会に混じりあっています。適切なアドバイザーであることが多いのです。
そんな人に話を聞いてもらうことから始めるといいかもしれません。
きっとHSPは、そんなあなたの悩みにうっすらと気づいているでしょう。
特に注目していなくても、周りにいる人の精神的状況を身体が勝手に受信してしまっているからです。
特に口には出しませんけれど（キリがないし、聞かれてないのに言うのもお節介ですからね）。
知り合いに悩みを打ち明けるのに抵抗があるなら、そういった本（たいていHSPが書いています）を読んだり、プロフェッショナルなカウンセラー（ほとんどがHSPでしょう）に頼むのもいいでしょう。