HSP/HSSについての考察 28 - 個性化のプロセス

HSP/HSSシリーズ、続いています。

人生について、スイスの精神科医・心理学者ユングは「個性化のプロセス」であり、それぞれの問いと答えを探していくのだと言いました。

HSPは、若いうちは中々個性を発揮しにくい。
なぜなら、人とただ一緒にいるだけで膨大な量の情報が身の内に入ってきて、人のニーズに振り回されるからです。
一緒にいる人の感情や欲求、体調の加減などを、まるで自分のことのように感じてしまう。なのでまずそれを何とかしてあげたいと思い、自分を後回しにする。
けれど、HSPは基本的には内向的です。
HSPの30％は外交的ですが、その彼らであっても深く内面を探り、一人で何かを探求していく面を必ず持っています。
なので個性があります。常に自分の内面と向き合っているからです。
しかしそれが外に向かって開花するには、先に述べたように他人のニーズを優先してしまうがため、少々時間がかかるようです。

そんな理由から、HSPは遅咲きの人がとても多い。
自分より他人のニーズを優先しなくても良いのだとか、他者とのちょうど良い距離感であるとか、人から発する感情などの情報から自分をガードする方法とかを、たくさん学んで。
それからようやく自分がしんどくなく個性を発揮していくことになるからです。
HSPさんは、なにごともあせらないことがとても肝要。
のんびりじっくり、社会と接することに慣れていきながら、自分を少しづつ発揮していくのは自然なことです。

アーロン博士の本の中に出てきた写真家の女性は、40歳から写真に取り組み始めて時間をかけて花開き、60歳のときにHSPという存在を知りました。
彼女はHSPがそこにいると地獄だったろうなという養育環境で育ちました。貧困の中、騒々しい家族、家の中は狭く自分の場所もなく、ぎゅうぎゅうと異性の兄弟と共に寝る生活。さらにそこには性的な虐待もありました。親は貧困のあまり忙しく、子どものことを余裕をもって観察する暇もありません。
そのように育つ中で受けた傷、そして封じ込めていた自己を癒して自分を取り戻すのに40歳までかかったのだとも想像します。
わたし自身もまた、似たような年月をかけてそのプロセスを辿ったからとても良くわかります。彼女の人生についてもっと知りたいくらいです。
その中で、たとえ60歳になっていてもHSPという気質があると知れたことは、かなり大きな恩恵だったと思います。
手探りで自分の個性を内省していたところに、似たような気質を持つ人が世の中には5人に1人も存在することを知れたこと。
自分が辿ってきた道のりや、ヒトや事象に対面した時の自分の反応、すべてを否定されがちで生きてきたHSPという個性を、肯定されたも同然だからです。

「個性化のプロセス」はイージーな旅ではありませんが、困難や障壁があってそれを乗り越えるからこそ物語は面白くなります。

若いうちに他人のニーズを優先してしまったことも、たくさんの傷を受けたことも。
そして、それを癒していくのも、自分を取り戻していくのも。
かなりダイナミックでエンターテイメントな物語を紡ぐ人生だと言えるのではないでしょうか。
そうです、HSPの人生って豊潤です。

続きます。

f:id:kuhmai:20200730101901j:plain — 伊豆の金目鯛！

＜HSP/HSSシリーズについて＞
「HSP/HSS」というのは、「敏感で感受性が強い（HSP）が、好奇心旺盛で刺激を求める（HSS）」という相反する気質を持つ人のこと。
HSPはHighly Sensitive Person、HSSはHigh Sensation Seekingの略。
その人達の割合は人口の約5%だそうです。
HSPという「名付け＝認識」が広まった時、わたし自身がそうであったと気づき、それまでの生きづらさや疑問があらかた解明しました。けれど、相反する気質も持ってることに矛盾を感じて調べると、それがHSP/HSSでした。
人口比で少数派であるそれへの気づきを書き綴ることで、似たような人と情報シェア出来れば、さらにそういった気質を知らない人にも認知してもらえたら（特にHSPな子供を持つ親御さんへ）と思い、シリーズを続けています。