不思議な話4 - 壇ノ浦にて
引き続き、怪談みたいな話です。
20年ほど前の話。
わたしは友人の結婚式のため、山口県下関市の壇ノ浦に来ていました。
なんの予備知識もなく来ていたので、昼間ぶらぶらとしたときに赤間神宮を通りがかってお参りしてようやく、あぁそう言えばここは平家が滅亡した壇ノ浦だったんだと気づきました。
赤間神宮は幼くして亡くなった安徳天皇と平家の鎮魂のために立てられた場所でした。
まだまだ若かったわたしは、一緒にいた友人と「耳なし芳一みたいになったら怖いよね」なんて適当な軽口を言いながら、資料などを見て回りました。
この時、ちょっとなんかあかん気がするって思ったんです。
もうちょっと丁重にしないといけないのでは?
けど、そうは思ってもまぁいっか気のせいか、とするのは若さゆえ。
わたしたちが泊まった宿は海に面していて、部屋からは関門橋を向こうに壇ノ浦が一望できる絶好のロケーションでした。
部屋は昔ながらの広縁があるオーソドックスな和室。
つまり、外に面した窓があり、広縁があってもう一つふすまがあって、居間兼寝室があるタイプ。
夜になって友人と二人、布団を並べて寝ていました。
ふと、目が覚めました。
時計を見ると夜中の2時半でした。
突然、ふすまがガタガタガタガタ………………ッ
と揺れて、音が鳴り響きました。
なんで………?
寝ぼけた頭で、そっか窓の外を大型ダンプか何かが通って揺れてるんだな、と思いました。
でも。
それにしては長くないか。
なんだろう。
いや、ちょっと待って。
………大勢が外から手でふすまを叩いてるような音じゃない?
怖い。
やばい、怖い。
と思っていたら、音がピタリと止みました。
「………今の、なに?」
友人が話しかけてきました。
同じように、起きていたのです。
「わからん。けど、とにかく寝よう」
この時間にこのことを追求してはいけない、と何故か思いました。
「電気点けて寝ていい?」
「うん、そうしよう」
わたしの問いかけに即答で同意した友人。
このつかの間の出来事に対する心の動きはほぼシンクロしていました。
わたしは即寝しました。
翌朝、一番にこの話になりました。
「外を大型トラックかダンプが通ったんじゃないかな」
とふすまを開け、窓を開けると断崖絶壁。
道路なんて無い。
「どっちにしろ、何かの衝撃だったなら外の窓が揺れるならともかく、内側になるふすまが揺れて音がなるのおかしくない?」
「だよね」
「あかんやつやね」
「あのさぁ………昨日の昼間行った赤間神宮で、なんかあかん気がしてん」
「なんかわかる」
「耳なし芳一の話とかせん方がよかったよね?」
「たぶんね」
どちらも霊感なんてまるでない。
けれど、なんかわからんけどそういう話になって終わりました。
ここで終わると怪談として成り立つんですけど。
この出来事が平家の霊によるものだろうという前提でお話するんですが。
わたしが思ったのは、壇ノ浦の戦いって1185年なんですね。
2020年の今から835年前ですよ。
そんな前の亡霊?幽霊?怨念?
そんなものが、まだ、あるのかってこと。
長い。
そんなにも長い間、囚われてしまってるのかって。
そのための神宮も建てられて、定期的に鎮魂の儀式も行われてるはずなのに。
耳なし芳一の話をしたのだって、ただの昔話であって、今につながる話あんて思うはずもなく。
前回書いた叔父のこともそうなんですけど。
前々回書いた日本兵さんたちもそうなんですけど。
この世に未練を残したり、死んでも死にきれないような思いを残したりして死ぬのって。
無限地獄とはよく言ったものですが、ちょっとやそっとの時間では浄化されない、仏教で言えば成仏できないものなのだなと。
人間の念や思いというものは、なかなか厄介なのだと感じた次第です。
怪談みたいなものシリーズ、次回あと一つだけお話して終わります。
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