不思議な話5 - 欧州のお化け事情
怪談みたいなお話シリーズ、今日でラストです。
怖くないしオチもないので、夏の夜の恐怖話と読むにはご期待に添えません。
某年、スペインの某所。
そこは古い古い街。
迫害されてきたユダヤ人が住み、かつ幾度もの戦争があった場所。
そんな場所に、ヨーロッパらしい中庭を持つ豪奢な建物がありました。
そこに何日が滞在していた時のこと。
とにかく身体が疲れるのです。
ぐったりしています。
せっかくのスペインを楽しみたいという気力だけで何とか動いていましたが、気がつくと身体がだる重く、無駄なことはしたくないと思ってしまう。
Wi-Fiスポットが中庭にしかなかったので、時おりそこで携帯をチェックしていました。
その時。
ゾゾゾゾゾゾゾゾ
と下から背筋をなでられるような悪寒と寒気、そして全身に鳥肌が立ちました。
霊感なんてない。
けど、これ絶対お化けとか幽霊が「いる」。
姿なんて見えない。
けれど、なんの根拠もないけど、確定事項のようにそう思いました。
何日か経って、一緒にいた友人に「ねぇ、お化けいるよね?」と言いました。
友人も「ですよね」と。
「中庭じゃない?」
「中庭ですね」
「しかもひっきりなしに増えてない?」
「どんどん集まってますよね」
一緒にいた他のお仲間にも言ってみました。
「いる。わかる」
「いるよね」
みんな口々に同意。
「特にあの場所」と中庭の一部分を言うと、そこも同意。
全員趣味趣向も仕事も経歴もバラバラな老若男女。
なのに意見は一致。
不思議なのですが、大量の霊の存在を感じるし、身体はだるのですがあんまり怖くはありません。
長期で住むのは良くないなとは思いましたが、短期滞在でとり憑かれるだの祟られるだのといった気配はありません。
ただ、大量にいるんです。
で「いる」ってことだけは存在アピールしてくるんです。
そして集まってきて、中庭の吹き抜けた空へとどんどん浄化されてはいくのですが、なんせ数が多いのできりがありません。
といった感覚でした。
別の時。
ポーランドの某所。
ポーランドは街中がまだまだ戦争の爪痕を色濃く残していて、一度国自体が世界から消滅してしまった程に侵略と戦争が繰り返された国です。
比較的新しいと思える建物にいました。
そこにも、じわじわと何かが寄ってくる気配がしました。
スペインの時と似ています。
怖くはない。
けど、なんかたくさん来る。
そして身体のエネルギーゲージがどんどん減っていく。
話はそれだけ。
ほんとにただなんとなく、なんですけど。
たぶん戦争や迫害などで亡くなった大量の人たちの、思念なのか幽霊なのか気配の残りみたいなものなのか。
そういったものが、ただただ漂っていて。
なんか人が集まったり、音楽があったり、アート表現が成されてたりすると、自動的にそれらが集まってくる。
そういう印象を受けました。
寿命が尽きたのだとしても。
自殺であっても、自分には全く非のない他殺(戦争もこれ)であっても。
何か悔いや念を残した、そのエネルギーってこの世に囚われてとどまってしまうのだなというのが、この怪談みたいなシリーズの体験から思ったことです。
そしてもちろん後者、自殺や他殺は悔いや念が残りやすい。
日本の天皇家が何をしているのかって、その一生を捧げて日本から世界への安寧と平和を願ってくださっているのですが、それには「鎮魂」の儀式が常にベースになっています。
皇室行事一覧を見るとわかるのですが、とにかく鎮魂です。
その土地を足で踏むこと。
天皇がそれをすることで、その土地と眠れる魂と未浄化のエネルギーみたいなものが浄化され癒やされ鎮魂されるんだそうです。
ですから、歴代天皇は高齢を押してでも、世界のトップビジネスマンも及ばないほどのプライベートほぼ無しのハードスケジュールでも、いろんな土地に足を運んでくださってるのです。
神仏のことは大好きでも、幽霊やお化けにはそんなに関心がありませんでした。
けれど、そういうものが「いる」こと。
そしてその存在が、生きている人間のエネルギーを多少なりとも(場合によっては結構)奪うことも。
何個かの小さな経験から、知ることができてよかったです。
街にそっと置かれたお地蔵さま。
お地蔵さんは仏の中で唯一、地獄という最下層に堕とされた人々をその現場で救ってくれる存在。
一番、われわれの近くにいてくれる神さま(語弊があるけど)なんですね。
そういうものに気がついたらそっと手を合わせること。
自分のご先祖様にお線香を手向けること。
地蔵盆とか昔ながらの儀式に参加してお手伝いをすること。
そういったことが個人にできる鎮魂の儀式かなと思います。
そして日本であろうが海外であろうが、人殺しや戦争だけでなく、人が死んだことがない土地なんてほとんどありません(人間が済む範囲であるならば)。
ってことは、いつでもどこでも鎮魂の気持ちって大事なのかもしれません。
それを専門職としている友人がいるのですが、その仕事にも改めて敬意を抱きつつ、怪談みたいな話シリーズを閉じたいと思います。
▼今日のおすすめはお休みです
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