円相
ものごとや人との関係性が、見事に、完璧とも言える円を描いたとき。
それはそこから崩れるサインでもある。
なにごとも永遠には継続しない。
浜辺に打ちよせる波が、一つとして同じ軌跡を描かないように。
一秒でも同じ形をとどめないように。
今までそれを予兆して、常に一歩引くようにしていた。
そうなったとき、形が変化したときに、強い感情に囚われないように。
いい感じの距離を取るようにしていた。
あるいは、身構えていた。
いつだって、あぁいいなぁと思った矢先に、それは手のひらからこぼれ落ちてきたから。
その衝撃の余波に、苦しむのはもうイヤだと思ってきたから。
でも、はたと気づいたら。
いつのまにか現実の自分はとても強くなっていて。
頭の中の自分は、幼い頃の傷つきやすい像を抱え込んでいたけれど。
それは、単なる過去の記憶の残像だった。
だから、完璧な円を、その匂いを、その場で思いっきり吸い込んで、味わうことができるようになっていた。
一歩引かずに。
むしろ前のめりで。
ただ一瞬の完璧さ。
一秒後にはどこかへ行ってしまったり、形を変えてしまうもの。
永遠に別れるもの、二度と会えないもの。
やっと掴んだと思ったら、するりと指先から去っていくけれど。
その寂しさも、そのときめきも。
全身で受け止めて、十二分に味わうことができていた。
そうしたら、ものごとの流れる速度が変わったように思う。
とても、ゆっくりになった。
あぁいいなぁ。
しあわせだなぁ。
そんな心地が長く続くようになった。
まるで、今、に集中すればするほど、時間が伸びるような感覚。
今、を大事に味わうようにすると、その時間が大きくなるような。
その先にあるのが、永遠じゃないからと。
いつかは消えてなくなるからと。
ずっと側にはいてくれないのだと。
お腹いっぱいに味わえてなかったからこそ、あせって、あわてて、あきらめていたのかもしれない。
読んでいただきありがとうございます☆祝福アレ♪
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