Eri Koo Blog

元気があればなんでもできる学習帳

東京駅の詐欺話 - 正直者は馬鹿を見るのだろうか

昔々、人を疑うことを知らない、純粋培養されたような20代のAくんがいました。
少し抜けていて、言われた言葉をそのまま受け取る人でした。
裕福な家庭に育ち、苦労も知らず、世間も知らない。
なので、簡単にだまされる人でした。
いつも、からかわれたり、馬鹿にされたりもしていましたが、彼を嫌いな人はいませんでした。

ある時、東京駅で知らない人に話しかけられました。
「親が危篤で実家に帰ろうとしていたのだけど、財布を落としてしまって困っている。新幹線代を貸してくれないか?」
と言うのです。
Aくんは、それは大変ですねとお財布に入っていたウン万円を渡しました。
「ありがとうございます。東京に戻ってきたらお返しするので連絡先を教えて下さい」
と相手は言い、Aくんは連絡先を教えました。

この話を聞いた友人一同、あちゃ~だまされたね、よくある詐欺じゃん。そういう時はその人に警察に行けと言うんだよ、本当に困っていたら交通費を貸してくれたりもするよ(これの真偽はわかりません)、などとAくんに言いました。
しかしこの話はここで終わりではありませんでした。

Aくんは続けて言いました。
「いや、だまされたんじゃないと思う。だって昨日ちゃんとお礼の電話がかかってきたから。それで、また会ってちゃんと新幹線代は返してもらったんだ。でもその人、すごく困っててさ……」
話を促すと、その人は「親が亡くなったのだけど借金を残していった。お金もないし自殺しようと思う」とAくんに言いました。
Aくんはかわいそうに思って、それなりにまとまった額をその人に渡しました。

友人一同、いやいやチョット待って、それ二重にだまされてるから、と言いました。
一度新幹線代を貸してくれた時に、Aくんのチョロいカモっぷりを把握したのでしょう。それでもっと出させることにしたのでしょう。
みんながみんな、もう二度とその電話には出るなと言いました。
Aくんが渡したお金は見ず知らずの他人に渡すにはなかなかの金額でしたが、裕福なAくんにとっては運良く?か、わかりませんが、気にならない金額でした。
なので、警察に訴えるとかもせず、そこでもう縁を切ってしまって終わりにすればいい、という結論になりました。

けれど結局それからも、Aくんはその人からの連絡を無視することなく、困っているという話をされる度にお金を渡していました。
最終的には、それを知った友だちの一人が見かねて、Aくんの親ぐるみで連絡を切らせました。

それでもAくんは、その人は困っていたんだろうなって信じているままのようでした。

この話の真相は誰にもわかりません。
けれどある程度の大人ならわかる、明らかに詐欺案件です。
今はわかりませんが、当時はよくある話でした。
それでも、もしかしたらその人は本当に困っていて、運良くAくんに出会い、相談し、お金を援助してもらえていただけかもしれません。
その可能性を否定する証拠もありません。

さて、Aくんは馬鹿を見たのでしょうか?

ここでAくんが裕福ではなかったとしたら、話は少し違っていたでしょう。
周りの友人一同も悠長には聞いていられなかったでしょう。
お金を渡すことでAくんの生活が脅かされたり、借金に巻き込まれたりするならば、それこそ警察に引っ張っていったでしょう。

そして、自己犠牲的な話となってしまったかもしれません。

けれどAくんは痛くも痒くもありません。
その人に渡した金額は、最終的には車一台分くらいになっていましたが、全く気にしていませんでした。

馬鹿を見たのは誰でしょうか。
誰も馬鹿を見ていないのかもしれないし、みんな馬鹿なのかもしれません。

いまだに、この話はなんなんだ?
と、思っています。

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読んでいただきありがとうございます☆祝福アレ♪

 

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