過去を振り返ろう

過去を振り返るな、とか。
未来を見ろ、とか。
今ここが大事、とか。

よく言います。
けれど、過去に傷があったり囚われてるならば、振り返ったり、じっくり向き合ったりすることで、未来や今をちゃんと見れるようになる。
目の前の花の美しさや匂いが、ようやくわかるようになる。
だから、過去を振り返るのって、大事。

「チルチルミチルの青い鳥」という童話があります。
チルチルとミチルという兄妹は、しあわせになれるという青い鳥を探しに旅に出ます。
いろんなものを見て、いろんな目に合って、結局は青い鳥を見つけられずに家に帰ります。
けれど、そこで見たものは、家の窓辺にいた青い鳥だったのです。

寓話というものは受け取り方次第で、様々な示唆を受ける事ができるのですが、この話の代表的なものは「しあわせはすぐそこにあった」かもしれません。
子どもの頃は「なんーだ、じゃあチルチルとミチルの旅は無駄だったんじゃん、家の中をよく探せば良いだけだったんやん」なんて思ったかもしれません。
けれど、そこじゃないんですよね。

旅に出て、いろんな経験をしたからこそ、家の中にいた青い鳥に気づけた。
たくさんの体験をしたから、しあわせになれる青い鳥なんていないんだ、と諦めた。諦めて、自分でしあわせをつかもうと思ったから、自分がいた場所にしあわせはあったのだと見えることができた。
そんな風にこの物語は受け取ることができるのだと、少し大人になるとわかる。

過去を振り返ることも似ていて。
過去という青い鳥を追いかけ、囚われているうちは、目の前のことが本当には見えていない。
けれど、そんなものはいないんだと。
もう、その事は終わったことなんだと。
しっかりと受け止めることができれば、その過去という青い鳥への執着から抜け出せる。
そうすれば、なかなか悪くない人生がそこにあることに、ようやく目を向けることができる。
おのずと、ちょっとは明るい未来も描けるようになる。

そして物語は。
そもそも、青い鳥を追いかけよう、と思ったことから物語は始まります。
しあわせになりたい、と決めて行動したことから、すべてが広がっていったわけです。

わたしも、毒親やいじめなどの過去の傷を昇華するのに7年程かかりました。
幼少期から思春期の傷は、その後の人生でも同じことが鏡写しのように繰り返されます。

こんなに苦しいのはもうイヤだ。
なんとか楽になりたい。

「しあわせになりたい」どころじゃない、まず苦しみから開放されたい。
そこからスタートした取り組みは、まるで、何百メートルもの古い地層を、スコップ一つで掘り進めているようでした。
掘っても掘っても、どんどん新たな地層が出てくるし、底がわからない。
傷のない人生を送る人なんていないのだから、この掘り返している行為に意味はあるのか？もっと今と未来を見るべきなのでは？と何度も思いました。
暗い穴の中で一人、空さえも小さく遠くなり、もうすべてが無駄なんじゃないかと投げ出しそうにもなりました。
けど、やっぱり終わりはありました。
掘っていることさえ忘れてしまった頃に。
気がつくと、掘り終えていたのです。
いらないものが積み重なっていたそこは、きれいに、クリアーなものとなっていました。
そこで、ようやく、今いる場所が見えました。

その場所をスコップ一つで掘っていくのは、あなた一人にしか出来ないこと。
けれど、ちょっと良いスコップをくれたり、掘り方のアドバイスを教えてくれたり、掘り返した土をよけておいてくれる人だっていたと、一人じゃなかったんだと、そのうち気づけるようになるのです。
それは直接会う人だけじゃなく、本や、ネットの向こうからかもしれないけれど、それでもそこにいるのは「人」なのです。
その作業は孤独に向き合わなければ成されないけど、決してあなたは一人ではない。

そうやって過去と向き合う作業が終わると、もう勝手に。
過去はただあった事実として、思い出と経験なのだと客観視できるようになり。
見えるものは今と、希望にも似た未来になっていく。

だから、過去に引きずられているのなら、無理矢理に今や未来を見ようとせず。
一回ちゃんと向き合って、整理整頓して、自分に必要な受難と体験だったのだと思えるようになれば。
無理矢理じゃなく、ごく自然に前を向けるようになるのだと、思う次第です。

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